『特許審査基準』(2023年)の修正に関する解読(一)
2025-04-29
新設の援用補足の制度
1.受理に関する規定
出願人が先願の書類を援用して欠落している特許請求の範囲や明細書(実用新案図面)を補うための受理手続について、出願人が援用補足の声明を行う条件や時期、出願人が先願の書類を援用して欠落している書類が補われたことを確認するための期限、受理条件が満たされた場合や満たされなかった場合の先願の審査ルールなどを明確化したものである。
2.予備審査に関する規定
発明の特許出願の予備審査における援用補足の適用がさらに詳細になり、援用補足の手続が標準化され、具体的な審査規則が明確化された。先行出願書類を援用して補足できる出願書類には、(1)特許請求の範囲または明細書の欠落、(2)誤って提出された特許請求の範囲または明細書、あるいは欠落または誤って提出された特許請求の範囲または明細書の一部が含まれる。特に注意すべきことは、補足する出願書類の内容先願書類の写しとその中国語訳に記載されるべきである。
援用補足に関する実用新案出願の予備審査への審査基準は発明出願の関連規定を適用することが明確化された。
3.実体審査に関する規定
実体審査の段階では、「確認すべき書類」には援用補足によって提出された出願書類も含まれることが明らかにされた。援用補足の内容は、当初の出願書類の一部であることが明らかにされた。
4.国際出願の国内段階に関する規定
国際段階に援用補足した部分や項目のある国際出願が中国国内段階に移行する際の手続を詳細化し、予備審査段階における審査規定を明確化し、特許協力条約実施細則の関連規定に対する保留の表現を削除した。
修正解読
特許法施行規則の新設した第45条は、援用補足制度を導入し、即ち、「発明または実用新案出願において、請求項、明細書または請求項、明細書の一部を欠落または誤って提出したが、出願人が提出日に優先権を主張した場合、出願人は、提出日から2ヶ月以内、または国務院の特許行政部門が指定する期間内に、先行出願書類を援用することで補足できる。補足提出書類が関連規定に適合している場合、出願日は最初の提出書類の提出日とする。」援用補足の目的は、特許請求の範囲、明細書又はその一部が欠落され、又は誤って出願された場合に、一定の条件の下で先願を援用することにより、出願人が欠落され、又は正された内容を出願に補足することを可能にし、それによって元の出願日を維持することである。
審査基準では、さらに詳細な内容が規定されており、(1)特許出願の初回出願時に先願の優先権を主張し、かつ、援用補足声明を提出すること、(2)援用補足声明及び関係書類の提出期限は、特許出願の初回出願日から2ヶ月以内又は特許庁が指定する期限内であること、(3)提出すべき書類には、援用補足声明、補足書類等が含まれる。
通常の国内出願に関し、出願書類が請求の範囲又は明細書を欠く(実用新案が図面を添付しない)場合には、特許法施行規則第44条第1項第1号に規定する受理不可の事由に該当するため,出願人が援用補足により上記書類を補充する場合には,まず受理条件への審査が行われる。受理条件の審査が適格であった場合、特許庁は受理通知を発行し、出願日を決定するが、受理条件の審査がまだ不適格であった場合、受理不可通知書を発行する。受理段階では、関連期限と補足書類が受理条件を満たしているかどうかが審査されるだけであるため、補足書類が援用補足の具体的な要件を満たしているかどうかは予備審査の段階で審査される。予備審査の後、優先権主張が関連規定に適合していないと判断された場合、または援用補足の声明、先行出願書類の写し及びその中国語翻訳文が審査基準の規定に適合していないことが確認され、実質的に出願書類の欠落に属し、受理条件が満たされていない場合、特許庁は特許出願受理取消の通知書を発行する。補足により提出された出願書類の内容が、先行の出願書類の写し及びその中国語翻訳文にまだ含まれておらず、関連規定に合致している場合、出願日が再決定され、補足書類の提出日が出願日とされる。
先願出願書類を援用し誤って提出された請求項もしくは明細書、または欠落しているもしくは誤って提出された請求項もしくは明細書の一部を補足場合は、受理条件の審査を伴わないため、予備審査段階で当該内容を審査する。審査基準の関連規定が満たされていない場合,援用補足声明は提出されなかったものとみなされるか,又は出願日が再決定されることがある。
分割出願の場合、初回の出願ではないため、援用補足制度は適用されない。
国際出願の場合、援用補足への審査は主に国際段階に受理官庁が行う。ただし、国内段階へ移行するための手続きに際しては、特に、援用補足の発効に関連する申請書類の写しの中国語訳などを提出する必要がある。国内段階へ移行した後,審査官が優先権が関連規定に適合していないと判断した場合,又は援用補足された項目若しくは部分に関する受理官庁の承認に明白な誤りがあると判断した場合,出願人は,援用補足される項目若しくは部分を維持するために中国出願日を訂正するか,又は中国出願日を訂正せず,援用補足される項目若しくは部分を削除することを選択できる。出願日の再決定の結果、出願日が優先日から12箇月を超え、かつ優先期間満了後2箇月以内である場合、出願人は優先権の回復を請求することができる。
援用補足は出願人を救済するための手続きであるため、救済措置の積み重ねという事態を避けるために、審査基準は除外規定を設けていることに留意すべきである。