特許侵害の判断における「生産・運営を目的とした」の認定について
2025-04-27
-(2020)最高法知民終第831号
特許法第11条第1項にいう「生産・運営を目的とした」とは、単に営利活動を行うことと同一視することはできなく、また、特許の実施主体の機構性質のみに基づき認定することもできない。特許実施行為自体に基づき、その行為が市場活動であるかどうか、特許権者の市場利益に影響を与えるかどうかなどを包括的に検討する必要がある。主に公共管理、社会福祉、公共福祉活動に従事する政府機関、公的機関、公共福祉団体およびその他の団体は特許を実施し、市場活動に参加して、特許権者の市場利益を害する可能性のある場合、「生産・運営を目的とした」行為に認定することができる。
上訴人であるJiaoRuiliと被上訴人である中国農業科学アカデミー飼料研究所(以下、飼料研究所)、北京大興区農業農村局(以下、大興区農業局)との発明特許権侵害の紛争は、特許番号がZL03143241.7で、発明名称が「牛及び牛乳量を強化する薬用飼料添加物とその調製方法」の発明特許(以下、関連特許という)に関わる。Jiao Ruiliは、飼料研究所と大興区農業局が2006年から2008年の科学技術協力プロジェクトにおいて許可なしに特許取得済みの方法を使用し、関連特許の製品を製造したと考え、北京知的財産裁判所(以下、第一審裁判所という)に訴訟を提起し、飼料研究所と大興区農業局が、侵害を止め、経済的損失と権利保護のための2,618,180元の合理的な費用を補償するようと要求した。
第一審裁判所は、飼料研究機関は公的機関で、大興区農業局は政府機関であり、生産と運営の資格も持たず、共同プロジェクトの実施が生産と運営を目的としたことを証明するための証拠はないと判示し、被訴侵害行為が「生産と運営を目的とした」特許侵害の要件を満たしていないため、JiaoRuiliの訴訟要求を却下した。
Jiao Ruiliは第一審裁判所の判決に不服し、最高人民法院に上訴し、第一審裁判所による「生産と運営を目的とした」ことに関する判断に誤りがあったと主張した。
最高人民法院は2020年11月25日に元の判決を取り消し、飼料研究所がJiaoRuiliに60万元の経済的損失と、権利保護のための15,000の合理的な費用を補償し、大興区農業局が共同で215,000の連帯補償責任を負うようと判決した。
最高人民法院は、第二審では、特許法は、「生産と運営を目的とした」を特許侵害の要素の1つとすることは、特許権者と公衆の利益の合理的なバランスをとることを目的とする。
特許侵害の判断において、「生産と運営を目的とした」への理解は、具体的な被訴の侵害行為に着目し、その行為が市場活動に属するかどうか、特許権者の市場利益に影響を与えるかどうかなどを包括的に検討する必要があり、「生産と運営を目的とした」ことを単に営利活動に同一視することもできなく、実施主体の機関の性質のみに基づき生産と運営の目的を持っているかどうかを判断することもできない。
政府機関、公的機関、その他の団体が公共サービスや公共福祉事業などの属性を持ち、生産や経営を目的としていなくとも、市場活動を実施し、特許権者の市場利益を害している場合は、「生産と運営を目的とした」要件に満たす。この場合、飼料研究所と大興区農業局との科学技術協力は、科学研究成果の生産性への転換を促進し、大興区の農業の転型と発展を導き、公共サービスと公共福祉事業の属性があり、直接的に生産と経営を目的としない。しかし、飼料研究所と大興区農業局との間の科学技術協力の第2段階では、大興区政府に提供された財政支援と、飼料研究所に提供された科学技術の成果により、「協力+示範基地+農民」のモデルを形成した。飼料研究所と大興区農業局が生産する乳牛用の天然飼料添加物は、大興区の主要な酪農場と畜産農場で実証され、良好な結果を達成した。
統計によると、科学技術協力の第2段階では、双方が合計10,320人の技術者と農民を訓練し、4,500人以上の農民に直接利益をもたらし、1億1,400万元の直接的な経済的利益を生み出した。よって、関係プロジェクトは、特定の経済的利益を生み出し、農民に直接利益をもたらしたことがわかる。
飼料研究所と大興区農業局によるかかる特許製品と方法への使用は、必然的にJiao Ruiliの特許可能市場を侵害し、特許権者の市場利益を損なうことになる。飼料研究所と大興区農業局の行為は「生産と運営を目的とした」要件に満たす。
最高裁判所の知的財産法廷の報告書による
2021年6月15日