並行無効宣告手続でのクレーム補正による影響 -(2020)最高裁判所知行終No.93
2025-04-27
【裁判要旨】
同じ特許権に対する複数の無効宣告の審査手続において、特許権者がいずれかの無効宣告の審査手続にクレームを補正し、その補正が国家知識産権局によって承認された場合、補正前のクレームを基礎とした被訴決定に起因した特許権確認の行政事件は、審査の根拠がなくなったため、審理を継続する必要がない。
人民法院は、前記被訴決定を取り消すべきで、国家知識産権局に新しい決定の作成を命じる必要もない。
【基本案情】
上訴人のGuy A. Shaked Investments Ltd.(以下、Guy社と呼び、特許権者である)と被上訴人の国家知識産権局、および元審第三者であるShenzhen Nasway Electronics Co.、Ltd.(以下、Nasway社と呼び、無効宣告請求人である)との実用新案権をめぐる行政紛争は、出願番号201390000237.9、実用新案名称「ヘアストレートブラシ」(以下、本権利という)に関する。国家知識産権局は、第30338号無効宣告の審査決定(以下、被訴決定という)を行い、本実用新案を無効宣告した。
Guy社は、被訴決定に不服し、北京知的財産裁判所(以下、第一審裁判所と呼ぶ)に訴訟を起こし、被訴決定を取り消し、国家知識産権局(以下、CNIPAという)に新しい決定をするよう請求した。
第一審裁判所は、被訴決定の審理基礎は特許公告時のクレームであるが、Guy社は本権利に対する別の無効宣告手続きで前述のクレームを補正し、補正後のクレームはCNIPAに承認されたため、被訴決定の審理は実質的意味がないので、Guy社の訴訟請求を却下した。
Guy社は上記判決に不服し、最高人民法院に上訴し、本権利に関する2つの無効決定がいずれも発効しない場合、本権利の別の無効宣告決定は本案の被訴決定の審査基礎の変更につながらないので、本案の被訴決定に対し実質的な審理を行うべきだと主張した。
2020年12月3日、最高人民法院は、第一審判決および被訴決定を取り消し、Guy社の他の上訴請求を却下した。
【裁判意見】
最高人民法院の第二審では、同じ権利に関する複数の無効宣告請求の審査手続において、特許権者がいずれかの手続にクレームを補正し、その補正が特許法の規定に準拠している場合は、元のクレームを放棄したとみなされるべきである。
特許権者の権利への処分は、必然的に、同じ権利に関わる他の係属中の無効宣告手続きおよびその後の行政訴訟手続きに実質的な影響を及ぼす。
別の無効宣告請求の手続において、Guy社が特許権者としてクレーム1,4,9をクレーム1に併入する補正を行い、その補正が国家知識産権局に承認された。
上記補正が補正前のクレームを放棄することを意味し、必然的に審理中の無効宣告審判にも影響を及ぼす。
このような情況で、本案の無効宣告審判は公告時の請求項(即ち、補正前の請求項)に基づき行われ決定をするべきではない。
別の無効宣告決定は2016年10月18日になされ実用新案権はすべて無効であると宣告され、CNIPAは同月19日に被訴決定を成し本権利がすべて無効であると宣告した。
本案の被訴決定が作されたときに、その審査基礎は本質的に存在しなかったので、審査を継続する必要もなくなる。作された被訴決定は取り消されるべきであり、CNIPAは新しい決定をなす必要がない。
第一審判決における被訴決定の審理基礎が変更され、被告決定への審理に実質的な意義はないとの認定は正しいが、被訴決定を処分しなかったので是正すべきである。
最高人民法院の知的財産裁判法廷による
2021年9月7日